<発作・てんかん発作・てんかんとは>

★“発作”は突然起こる体の変調を指します。てんかん発作や心臓発作など様々あります。

★てんかん発作は症状の名前です

 “てんかん発作”とは、『脳のニューロンにおける過剰に同期し、大抵は自己終息性のてんかん活動の現れ』と定義されます。てんかん活動とは、大脳の必要以上に過剰な興奮を意味します。つまり、大脳の一部または全体が突然過剰に活動し発作的に様々な症状を引き起こします。時には意識を失う事もありますが、ほとんどのケースでは5分以内に自然に症状はおさまります。

例えば、大脳のうち運動を司る部分にてんかん発作が起こると痙攣や筋肉の突っ張りなどを起こし、感情を司る部分に起こると異常行動を示したりします。

★てんかんは病名です

“てんかん”とは『てんかん発作を引き起こす恒久的な素因によって特徴付けられる脳の疾患』と定義されます。すなわち、てんかん発作を繰り返し慢性的に起こす大脳の病気がてんかんと呼ばれます。発作が1回しか起きていない場合はてんかんとは診断されません。24時間以上の間を空けて2回以上てんかん発作を起こしてはじめて、てんかんという病気が診断されます。

 

<てんかん発作の特徴>

以下のような発作症状を示す場合、てんかん発作である可能性が高まります

1、      症状がある程度同じである(再現性の高い症状)

2、      発作が15分で自然におさまる

3、      抱き上げたり、体の向きを変えたりしても発作の症状が続く

  ※発作を起こしている動物に噛まれてしまう事は非常に危険です。発作の最中はなるべく動物に触れないようにして見守ってあげて下さい。

4、      失禁や過剰なよだれなどの自律神経症状が伴う

5、      前兆のようなもの(幻覚を見ている様子など)が伴う事がある

6、      睡眠時に発作を起こす

7、      発作後に以下のような様子をみせる(発作後兆候)

 もうろうとする、ふらつく、グルグルまわる、目が回る、目が見えなくなる、徘徊する、食欲が増す、攻撃性が増す など

 

<てんかん発作を起こす原因/原因によるてんかんの分類>

てんかん発作は大脳の異常によって生じます。その異常が特定されない場合は“特発性てんかん”と呼ばれ、脳の異常が特定される場合は“構造的てんかん”と呼ばれます。

1、      特発性てんかん

 特発性てんかんはさらに“素因性”・“おそらく素因性”・“原因不明”の3つのカテゴリーに分類されます。いずれも遺伝的な背景が特定ないし示唆されています。大脳における神経伝達物質の連携の異常により大脳活動の不均衡を起こすため、てんかん発作を生じると考えられています。

 一般的に6ヶ月齢〜6歳齢の間に発症します。

 犬のてんかん発作の原因として最も多いです。

2、      構造的てんかん

 脳の病気は時にその症状のひとつとして、てんかん発作を起こします。

 大脳奇形、脳腫瘍、脳炎、脳血管障害(脳卒中)、蓄積病などが含まれます。

 猫のてんかん発作はこちらの方が発生が多いです。

 

なお、低血糖で脳のエネルギーが枯渇したり、肝臓や腎臓などの病気が原因で大脳に悪影響を及ぼす物質が体内に溜まることなどで発作を起こす事もあり、その場合は“反応性発作”や”急性誘発性発作”などと呼ばれます。

 

<てんかんに罹りやすい犬種の一覧>

1、      遺伝的背景が特定されている犬種

ラゴット・ロマーニョ、ベルジアン・シェパード、フィニッシュ・スピッツ、ゴールデン・レトリバー、ハンガリアン・ビズラ、アイリッシュ・ウルフハウンド、シェットランド・シープドッグ、スタンダード・プードル

2、      遺伝的背景が示唆されている犬種

ボーダー・テリア、プチ・バセット・グリフォン・バンデーン、イタリアン・スピノン、ラブラドール・レトリバー

3、      てんかんが多く発生する家系が特定されている犬種

オーストラリアン・シェパード、バーニーズ・マウンテン・ドッグ、ボーダー・コリー、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、ジャーマン・シェパード、ビーグル、ダックスフント、キースハウンド、シベリアン・ハスキー、スタッフォードシャー・ブル・テリア、スキッパーキ

4、      日本国内の疫学調査にて、てんかんの発生が多い犬種

チワワ、ダックスフント、雑種、トイ・プードル、ヨークシャー・テリア、アイリッシュ・グレイハウンド、ボストン・テリア、ビーグル

 

<重積発作と群発発作について>

5分以上発作が持続する、または意識が戻る前に次の発作が連続して起こる事を発作の重積と呼びます。

5分以内に発作が終息し完全な意識の回復を認めても、同様の発作が24時間以内に2回以上起こることを群発発作と呼びます。

基本的に5分以内で終息する単発の発作であればすぐに命に関わる事はありませんが、重積状態が30分以上続いたり日に10回以上もの群発発作を起こしたりすると、脳が受けるダメージが深刻となり、後遺症が残ったり場合によっては死に至る事もあります。そのため、すぐに動物病院に連れていき発作を止める緊急治療が必要となります。

 

<犬・猫のてんかん発作の診断、その重要性>

てんかんの診断は、まず詳細な問診(当センターの発作問診票をご利用下さい)から始まります。発作を起こす原因は多岐にわたりますが、飼い主様から得られる情報だけでも多くのケースでその原因をある程度予測する事が出来ます。発作の様子をとらえた動画は非常に重要な診断ツールになるため、ペットの発作を目撃した際は動画を撮影して下さい。特徴的な発作の症状があり、身体検査・神経学的検査・整形学的検査・詳細な血液検査・尿検査などに異常を認めない場合は、特発性てんかんの精密検査(下記)へ進みます。

脳神経学的検査に異常がある場合は、脳の病気を持っている可能性が高まります(構造的てんかん)。従ってそのような際は早期に脳の精密検査(MRI検査など)を受ける事が推奨されます。

当センターでは国際獣医てんかん専門機関(IVETF)が発表している犬の特発性てんかんの診断基準に沿って、てんかんの正確な診断を実施しています。猫でも同様の診断手順を踏みます。

IVETFの診断基準は3段階の信頼レベルからなり、当センターでは最も信頼度の高いレベル3までの実施が可能です。

  信頼レベル1

てんかんに合致する特徴を持つ症状がある

発症年齢が6ヶ月齢〜6歳齢である

身体検査・神経学的検査・詳細な血液検査、尿検査に異常がない

  信頼レベル2:全身麻酔下での検査を含む

さらに詳細な血液検査を行い異常がない

MRI検査および脳脊髄液検査を行ない、脳に検出可能な病気が見つからない

  信頼レベル3:ここまで実施して確定診断となる

脳波検査でてんかん性の異常脳波を確認する

※脳波検査は鎮静剤を投与して行います

※特発性てんかんの犬・猫において、1回の脳波検査で異常脳波を検出できる確率はおよそ70%です

 

てんかんを正確に診断する事は、以下の理由で重要です。

Ê てんかんは、ほとんどのケースで生涯にわたる投薬が必要であり、それはすなわち投薬の負担(飼い主様・ペットともに)と経済的負担がペットの生涯にわたることになります。また抗てんかん薬の中には長期投与で副作用を示すものがあるため、治療の妥当性・必要性を評価する必要があります。

Ê 発作を起こす他の病気の見落としを防ぐ。

Ê てんかんの対処をしないでいると症状が重篤化するケースが多く、進行すると突然死のリスクが高まります。早期から抗てんかん治療を開始することでより良い治療効果が得られる事から、なるべく早期に精度の高い診断を行う事が推奨されます。

 

<犬・猫のてんかん発作の治療>

発作の最中はペットをなるべく安全な場所に移動し、おさまるまではペットに触れずに見守っていて下さい。診断と正しい対処法を考えるためにも、発作の様子を動画に収める努力をして下さい。

1、      特発性てんかんの治療

 薬(抗てんかん薬)を飲む事で、発作が起こり難くします。1種類の薬のみでコントロールする事が理想ですが、発作の抑制が不十分な場合は24種類の薬を同時に服用します。犬と猫が服用できる抗てんかん薬は人に比べかなり種類が少ないです。薬の効果や副作用は種類によって異なり、また個体による差も存在します。そのため、ペットにとって最適な薬や投薬パターンを決めるには、飼い主様と獣医師の協力のもと根気強く模索する必要があります。

適切なモニターを行えば、薬の副作用によってペットの生命に危険が及ぶ事はほとんどありません。なお、抗てんかん薬の投与は基本的にペットの生涯にわたる長期服用が必要となります。また、薬の開始後に服用をやめてしまうと服用前よりも発作が重篤になる事があるため、治療開始前にご説明を詳しくさせて頂きます。

抗てんかん薬のみではどうしても治療が上手くいかない場合は、薬以外の治療方法として、迷走神経刺激療法(VNS)が検討されます。これは、手術で首を通る迷走神経という神経に刺激を送る装置を体内に埋め込む方法です。一度手術すれば生涯交換の必要は無く、効果は時間経過とともに高まって行きます。ただし、刺激装置が非常に高価であり、治療効果が事前に予測できないという側面もあります。

現在の所、ペットのてんかんに対して科学的に有効性が証明されている食事療法はありません。

 

2、      構造的てんかんの治療

脳の病気に対する治療(個々の病気の治療法に関しては、獣医師と相談をして決定します)に加え、上記の特発性てんかんの治療も合わせて行います。

 

<犬のてんかん発作の予後>

特発性てんかんの場合、適切な抗てんかん薬の服用によっておよそ7080%のペットが良好な発作コントロールを実現できます。ただし、適切な治療が行われても発作が生涯ゼロになる事はまれです。治療の目標は、治療開始前の半分以下の頻度に発作を抑える事になります。良好なコントロールができれば、寿命はてんかんを持たない動物とほぼ同等となります。

しかし、残りの2030%は難治性てんかんとなり、寿命の短縮の可能性が生じます。

構造的てんかんの予後は、背景に存在する脳の病気によって大きく左右されますが、特発性てんかんに比べると不良です。さらに、発作のコントロールが上手くいかないケースはより短命である事が多いです。

群発や重積を経験した場合は生存期間が短くなる傾向にあります。

重積状態に陥ると、死に至るケースもあります。また、生還できたとしても意識消失や寝たきり状態・失明・ふらつき・痴呆症のような異常行動などの後遺症が残るケースがあります。

人と同様、まれに突然死を起こすケースがあります。人では、突然死のリスクは適切な発作コントロールによって減らせる事がわかっています。