ダクタリ会

症例

犬の環軸椎不安定症 (AAI) に対するセメントレス・プレート固定術

2歳のトイ・プードルにおける環軸椎不安定症(AAI)に対する治療を実施した。頸部を動かすと痛みがあり、前肢にふらつきが見られるという訴えがあり、かかりつけ医から紹介来院した。神経学的検査の結果、両前肢に軽度の不全麻痺が確認され、歩行時のふらつきも確認され、神経機能の低下が疑われた。X線、CT、MRIで環軸椎(C1~C2)に明らかなズレが確認され、環軸椎不安定症(AAI)と診断された。この病態は特に超小型犬〜小型犬で発生しやすく、未治療の場合は神経損傷が進行し、四肢麻痺や呼吸に関わる合併症を引き起こす。今回の治療では、セメントレス固定術を選択した。従来の治療では、骨セメント(PMMA)や細いステンレスワイヤーを使用することが多いが、これらの方法には問題があった。PMMAは感染のリスクを高め、ステンレスワイヤーは長期間使用することで破損の可能性があるため、より安全で持続可能な方法を選択する必要があった。手術前には、3Dプリンターモデルを使用して術前シミュレーションを実施し、スクリュー挿入時の神経損傷を防ぐための穴位置を確認した。手術は腹側アプローチを採用し、カスタムチタン製プレートと2.0ロッキングスクリューを使用してC1~C2を固定した。さらに、骨癒合を促進するために関節面の掻爬を実施、自家海綿骨とb-TCPを混合して移植した。術後のX線とCTにより、固定具が適切に設置されていることが確認された。このセメントレス固定術は、従来の骨セメントやステンレスワイヤーを使用した方法に比べ、破損や感染のリスクを大幅に回避でき、3Dシミュレーション技術を活用することで、スクリュー挿入の精度が向上し、神経損傷のリスクを最小限に抑えることができた。今後、この手技が超小型犬における環軸椎不安定症の治療法の一つになる可能性が高い。特に長期的な予後が良好であることが期待され、従来の治療法に比べて優れた選択肢となる。この手技の有効性がより広く認識されることを期待している。

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