ダクタリ会

症例

パテラアラタという難題(膝蓋骨高位症候群)

足の長いプードルなどに時折見られる”パテラアラタ(膝蓋骨高位症候群)”まだ、よく解明されていない犬の膝の疾患である。現在のところ、その診断基準も大型犬の参考値から判断するしかない。今回のワンコも明らかに膝関節伸展位において大腿骨滑車の上方にパテラが位置し、徒手により内側に脱臼し、跛行を呈しているという。

この問題を解決するためには大腿骨滑車内に膝蓋骨を外科的に戻し、大腿四頭筋から膝蓋骨、そして大腿骨にモーメントを伝えることにが重要なポイントになる。そのためには、膝蓋靭帯を脛骨の付着部位をより下方修正させる必要がある。
事前に脛骨粗面骨切りモデルをCADで作成し、FEM解析シミュレーションにより脛骨粗面ピンニング モデルVS 脛骨粗面プレート固定モデル)をコンピューター上において最大応力等について比較検討を行った。その結果、プレート固定モデルにおいて有意な骨切り部位の安定性が示唆された。脛骨粗面を完全に骨切りし、大腿四頭筋〜膝蓋骨〜膝蓋靭帯〜脛骨粗面のアライメント調整とともに、膝蓋骨が大腿骨滑車内に位置する様に5mm程度、下方修正し、7穴スタッガードプレート(国内薬事承認品)に脛骨粗面ラテラル移動スペーサー1mm~2mmを採用し、脛骨内側からスクリュー固定を行った。膝蓋骨は大腿骨滑車内に誘導された。犬の膝蓋骨内方脱臼については様々なバリエーションが報告されていることから、患者毎の修正の工夫が必要になる場面も少なくない。今回はインプラントが破綻せず、骨癒合までの膝靭帯の張力に抵抗出来る固定方法について検討した。また、骨切り部位の癒合状況を定期的に確認していく必要がある。

 

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