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症例

上腕骨顆の不完全骨化(IOHC)顆内骨折・(HIF)に続発した上腕骨遠位粉砕骨折

の上腕骨顆は内側と外側の別々の2つの骨の中心部分として構成されています。この上腕骨顆の外側部分と内側部分が癒合しないと、矢状面に軟骨性の亀裂が開存します。これを上腕骨顆の不完全骨化(IOHC)と呼んでいます。今までは上腕骨顆のすべての亀裂はIOHCによるものであると信じられて来ましたが、最近では、中・高齢犬の症例の大部分が実は疲労骨折が原因になっているのでは?と考えられ始めました。したがって、この病気をIOHCと呼ぶよりも上腕骨顆内骨折(HIF)という用語の方がふさわしいのではないか?という研究者もいるようです。この亀裂はX線写真で検出できる場合もありますが、丁度、尺骨に重なるので分かりにくくなります。CT検査は顆内亀裂を検出するために有用なモダリティとなります。HIFの治療法については整形外科医の中でも、よく議論になる話題です。外科手術には合併症のリスクがあるため、臨床的に症状のないHIFは治療しないようです。しかし、最近の研究では、HIFが偶発所見として特定された場合、18%の患者さんで骨折に進行することがわかりました。もし、肘に関連する痛みや跛行がある患者さんには、将来の骨折を防ぎ、跛行を解消し、骨癒合を促進するための顆間へのスクリュー埋入が最も一般的に行われています。顆間へのスクリューは外側から内側へ打つと合併症の発症率が大幅に低いとされ、現在、多くの整形外科医は、Cアームを使ってこのスクリューを経皮的に埋入しています。

さて、患者さんは中年齢の35kgの大型のワンコです。CTで確認するとIOHC・HIFの存在が確認されました。上腕骨へのプレーティングと4.5mm キャニュレイティッド ヘッドレス コンプレッションスクリューを用いて顆間を圧迫固定しました。亀裂部位はマイクロピッキングで出血を促し、自家海綿骨を移植しました。輪禍などの高エネルギー外傷ではなく、上腕骨が骨折する場合はIOHC・HIFを疑う必要があります。

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