ダクタリ会

症例

内側鉤状突起分離症(Fragmented Medial Coronoid Process:FMCP)

FMCPを靴で例えるとサイズの合わない靴を履いて歩いている状態です。犬の肘関節は3つの骨でできています。上腕骨・橈骨・尺骨この3つの骨がぴったり合って初めて正常に動きます。しかし肘関節形成不全では骨の長さや形が少し合っていません。サイズが合わない靴で歩くと例えば、靴が少し小さい、足の形に合っていないとすると歩くたびに一部の場所だけ強く当たります。するとどうなるか。その部分に、強い圧力、摩擦、痛みが起こります。肘関節ではその負担が内側鉤状突起(Medial Coronoid Process)に集中します。ヒビが入る、骨が割れる、骨片ができる。これがFMCP(内側鉤状突起分離症)です。つまりFMCPは靴の中の小石だけの問題ではなく、そもそも靴のサイズが合っていない(=肘の形成不全)ことが原因で起こる病気です。重要なのは、骨片の除去、関節炎のコントロール、長期的な関節ケアです。本症例ではCTにて内側鉤状突起領域に明瞭な遊離骨片形成が確認され、周囲関節面には軟骨不整および軽度のsubchondral bone sclerosisを認めました。肘関節内側コンパートメントにおける機械的刺激が疼痛の主因と判断し、関節内遊離骨片の摘出・PRP(Platelet-Rich Plasma)の関節内投与を実施しました。PRPは自己血由来の成長因子を豊富に含み、炎症抑制、軟骨代謝改善、関節内環境の修復促進が期待されます。しかしながら、FMCPは肘関節形成不全(Elbow Dysplasia)コンプレックスの一要素であり、骨片摘出のみでは変形性関節症(OA)の進行を完全に抑制できない症例も少なくありません。

 

症例カテゴリー

ページトップへ