ダクタリ会

症例

出血性心タンポナーデに対する胸腔鏡下心膜切除術

ールデンレトリバーは血管肉腫の好発犬種です。特に右心耳、肝臓、脾臓などに発生する事が知られています。右心耳であれば心タンポナーデという状態を引き起こし、循環状態が悪化し低血圧となり突然倒れてしまいます。聴診でマッフルサウンド、心電図では電気的交互脈、胸部エックス線ではムーンハートを呈しています。超音波で拡張期に右心房が虚脱する様子が確認されます。心嚢内圧を下げるために、直ちに心膜穿刺術で救命を行います。残念ながらこの腫瘍に対する根治的な治療方法はなく、進行すれば再発性の出血性心タンポナーデを何度も繰り返す(何度も倒れる)ことになります。そこで、姑息的な手段ですが心膜切除術を行なっておけば心タンポナーデを回避する事が出来ます。近年、テクノロジーの発展とともに開胸術ではなく胸腔鏡を使って小さな傷で手術を行う事が可能となっています。この病気は突然ワンコを襲い、見つかった時はすでに進行している事がほとんどです。だからこそ、最小侵襲で最大の効果が期待できる胸腔鏡下心膜切除術に真の価値があると言えます。開胸術に比べ痛みも少なく入院も短くて済むからです。我々はたとえ根治不能な病気であっても、患者さんがQOLを保ちながらご家族との大切な時間を1日でも長く過ごせるように、チームで話し合いながら”より良い”を常に模索し続けます。

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