ダクタリ会

症例

呼吸筋麻痺〜ベントラルスロット〜

齢犬が急に四肢不全麻痺から起立不能となり夜間救急病院を受診したそうです。その後、MRIなどの精密検査を希望されかかりつけ医より来院されました。著しく甲状腺ホルモンの濃度が低下しており、甲状腺機能低下によるミオパチーの併発も考えられました。また、横隔膜の動きも時間の経過とともに悪くなっており、 血液ガス検査ではPCO2 68.2mmHgと高値を示していました。頸髄損傷による呼吸筋麻痺が進行していると判断しました。緊急的にチラージンの静脈内投与を行ったのち、小康を得たタイミングで全身麻酔下でCTとMRIを実施したところ、C4~C5間に腹側から重度の脊髄圧迫病変が確認されました。そのままベントラルスロットで頸髄の除圧術を実施しました。術後、直ぐには二酸化炭素濃度は改善しなかったため、術後はプレドニゾロン、チラージンの断続的な静脈内投与、人工呼吸器による強制換気を継続しました。脊髄神経の改善により麻酔導入から16時間後にようやく抜管が可能となりました。幸いにも徐々に神経学的な改善が得られています。このように重度の椎間板ヘルニアを発症した場合、痛みや麻痺だけではなく脊髄軟化症、呼吸筋への影響などから、生命の危機に直面する場合もあるので特に椎間板ヘルニア好発犬種では進行状況を注意深くモニタリングを行うことが重要です。このような理由から、いざ手術や治療となると頭蓋内腫瘍や重度頸髄疾患の患者さんでは、術後は24時間体制でのクリティカルケアができることが必須となります。

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