ダクタリ会

症例

心タンポナーデ+腹腔内出血によるショック

高齢の50kg近い大型犬が腹腔内出血を主訴に来院しました。

来院時は血圧は維持していたものの頻脈、起立不能状態であり担架で車から病院まで運びました。
体が大きく本人も動いてくれない状態だとできる検査も限られてしまいます。
救急患者の場合、無麻酔CT検査では即座に多くの情報を得ることができるためとくに有用です。今回の患者さんも鎮静剤のみで撮影することができ診断・治療することができました。

CT検査では心嚢水貯留、腹腔内出血、肝臓・脾臓腫瘍が認められ、ショックの原因は
心タンポナーデによる閉塞性ショック+腹腔内出血による循環血液量減少性ショックと考えられました。
心タンポナーデは心臓とその外側の心膜の間に液体が貯留することで心臓に血液がもどらなくなってしまう病態で、貯留した液体を抜去しない限り心機能が悪化し死に至ります。この患者さんからは220mlもの出血性心嚢水が回収され、その後4時間程度の輸液治療により自分で歩いて帰ることができるほど回復しました。

これらの背景には心臓、肝臓、脾臓における血管肉腫があると考えられ、治療を行なっても長期的な生存は見込めません。ただ心タンポナーデの状態になっているのであれば心嚢水を抜くことで一時的ではありますが元気になってくれます。

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