ダクタリ会

症例

抗がん剤治療中の敗血症性ショック

多中心型リンパ腫で抗がん剤治療中のワンちゃんが急性の下痢嘔吐、そして元気消失のために来院しました。
リンパ腫に対する治療は奏功しており完全寛解(検査で腫瘍が検知できない状態)を維持していましたが、副作用で消化器毒性が出てしまいました。
ショックにより多臓器に障害が出ており、輸液や昇圧剤による治療を行なってもなかなか安定しない状態が続き、敗血症性ショックとして集中治療を行いました。

敗血症性ショックとは感染に対して体が負けており多臓器不全を起こしている状態で、抗がん剤治療中は免疫力低下が起こるため発症リスクがあります。人間でも死亡率が30-40%の病態であり、動物では最大で70%との報告もあります。人間においては昔から研究されており、対応がある程度決まってきてはいるのですが、動物での大規模研究は困難なためヒトを参考に治療を行なっているのが現状です。

この患者さんは敗血症性心筋症や相対的副腎不全(Critical illness-related corticosteroid insufficiency)を合併したものの治療が奏功し救命に至りました。
集中治療にはこまめなモニタリングや投薬内容の見直しが必要であり、多くのスタッフが24時間関わっています。獣医師・看護師の懸命な治療が実を結んだ一例でした。

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