ダクタリ会

症例

消化管穿孔による細菌性腹膜炎・敗血症性ショック

8歳の大型犬が2週間に及ぶ食欲不振、下痢を主訴に紹介受診しました。これらの症状に対してホームドクターにより抗生剤などによる治療が既に行われており、患者の状態は悪いながらも小康を得ていました。来院時の血液検査では非再生性貧血、好中球を主体とした総白血球数の増加、低タンパク血症、高乳酸血症がみられ、胸水・腹水が貯留していました。腹水は赤く濁り、顕微鏡下での細胞診では多量の細菌と好中球貪食像がみられ、消化管穿孔による細菌性腹膜炎と診断しました。

消化管穿孔を起こす原因として多いのは消化管内異物と腫瘍です。この患者さんは犬種・年齢的にもどちらの可能性もあったため、CT検査で原因確定の後に緊急開腹手術を行うことになりました。CT検査で小腸内に異物が確認され、今回の原因と診断しました。予定通りそのまま手術室へ、病変部の壊死した腸管を切除、吻合術を行い吸引式のドレインを設置し終了しました。全身麻酔から無事に覚醒し、状態は安定していましたが翌未明から血圧は徐々に低下し、輸液、ノルアドレナリンに反応せず、一時乏尿(尿が作られない状態)となりました。第2の昇圧剤としてバソプレシンを追加して血圧はすぐに上昇、敗血症性ショックから離脱することができました。この患者さんは幸いにも数日間の入院ののち、元気に家に帰ることができました。

細菌性腹膜炎は診断して直ちに開腹手術が必要な病態です。もちろん今回の患者さんのように手術後に状態が悪化するケースも稀ではないため、その後の集中治療管理も非常に重要です。当センターでは緊急的な手術にも対応しており、その後の24時間看護による集中治療ケアが可能ですので安心してお預けいただけます。

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