ダクタリ会

症例

犬の会陰ヘルニア

未去勢のオスには会陰ヘルニアのリスクがあります。

去勢術、精管固定術、結腸固定術、内閉鎖筋フラップ、ポリプロピレンメッシュで再建しました。
剃毛中、偶然にも、陰嚢に???? 急いでFNAをして肥満細胞がたくさん採取され、陰嚢ごと切除となりました。

所見
提出された陰嚢腫瘤(2x2x1cm)は十字方向で切り出し、4枚の標本を作製しました。
標本上、この組織では、真皮から皮下組織にかけてやや境界不明瞭な腫瘍性肥満細胞の増殖巣が観察されます。腫瘍細胞はシート状に増殖しています。腫瘍細胞は類円形核と塩基
性の微細顆粒状細胞質を有しています。この増殖巣には好酸球浸潤や線維化がみられます。腫瘍細胞の異型性は軽度~中等度で、核分裂像は高倍率10視野あたり1個観察されます。標本上、腫瘍は切除縁では観察されません。側方マージンは最も狭い部位で1.1cm、深部では0.5cmです。

病理組織学的評価
腫瘤:皮膚肥満細胞腫
グレードII (Patnaikの分類システム)低グレード (二段階グレード法)

コメント
提出された腫瘤組織には肥満細胞腫が観察されました。この患者の肥満細胞腫はPatnaikの分類システム(Ⅰ=低グレード、Ⅱ=中グレード、Ⅲ=高グレード)によると、グレードⅡに分類されます。イヌの肥満細胞腫の大部分(約80%)がグレードⅡに分類されます。グレードⅡは肥満細胞腫の比較的大きなサブグループですので、腫瘍の臨床的挙動は必ずしも一定せず、様々な臨床動態を示すことが予測されます。また近年、より良い予後情報の提供のため、代替的な二段階の組織グレードシステム(低および高グレード)が提唱されました。この分類は、核の異型性と分裂指数に基づいています。この新しいグレードシステムでは、高グレード肥満細胞腫は短い生存期間、短い転移までの期間、または新たな腫瘍の発生と有意に関連しています。生存期間の中央値は、高グレードの肥満細胞腫では4カ月以下でしたが、低グレードの肥満細胞腫では2年以上でした。
(Vet Path 2011, 48:147-155)

二段階グレード法に基づくと、この患者の腫瘍は低グレードであり、この腫瘍は再発や時期をおいて他の部位における発生が比較的よく見られるので、今後もモニターを継
続することになりました。

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