ダクタリ会

症例

前立腺癌を外科的に切除した犬の1例

10歳のMIX犬さんが、慢性の血尿、頻尿を主訴に当院を紹介受診されました。かかりつけ医の検査では、前立腺癌が疑われており、その精査と治療を目的に受診しました。診断のために、BRAF遺伝子変異検査の外注検査を行いました。この検査は細胞の遺伝子情報を調べて、癌か正常細胞かを調べる検査です。前立腺がんでは、正常な細胞からは検出されないBRAF遺伝子の変異が起こることが知られており、これを検出する検査です。この症例はBRAF検査が陽性であり、前立腺癌と診断しました。後日、CT検査を実施し、明らかな転移が認められなかったため、前立腺全切除を実施しました。膀胱の尾側にある前立腺を慎重に露出させ、切除し、膀胱と遠位の尿道を吻合しました。術後の経過は極めて良好であり血尿は消失し、尿失禁も認められませんでした。
 前立腺全切除は過去の報告では合併症が非常に多い手術で、33〜100%の症例で尿失禁などの合併症が認められると報告があります。また一般的に前立腺癌は悪性度が高く、多くの症例で発見時には既に進行しており、外科不適応の状況が多いのが現状ですが、本症例のように重要な神経や血管を温存できる状況であれば合併症を防ぎながら完全切除できることもあるので、早期発見とCTなどの詳しい検査が最も大切であると言えます。

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