犬の原発生肺癌(左)












高齢のワンちゃんが最近、ひどく咳き込むようになったとのことで、主治医を受診されました。
エックス線検査と肺の針吸引生検で肺の腫瘍が疑われたため、当センターに紹介受診しました。
左肋間開胸術により左後葉を外科用ステープラーで一括切除を行いました。
病理検査の結果は以下のとおりです。
所見
提出された左肺後葉腫瘤(5×3×2㎝)はマージン部に緑のインクを塗布して切り出し、
3枚の標本を作製しました。
標本上、この腫瘤は肺実質内に形成された、やや境界不明瞭な腫瘍性病変です。病変では、
線維性間質を伴って、不規則な腺管状、乳頭状、微小乳頭状に増殖する上皮性腫瘍が認め
られます。腫瘍細胞は立方形~円柱状で、中等量の好酸性細胞質と、明瞭な核小体を1つ
有する類円形核を持っています。異型性は中等度で、核分裂像は高倍率1視野に4-5個
です。腫瘍内には壊死、好中球、マクロファージ浸潤が認められます。腫瘍は一部浸潤性
を示していますが、明らかな脈管侵襲像は観察されません。標本上、切除端に腫瘍細胞は
みられず、腫瘍は切除されています。
病理組織学的評価
肺腺癌 Pulmonary adenocarcinoma
コメント
提出された組織に観察された腫瘍は形態的には腺癌であり、他に原発巣となっている腫瘍
(腺癌)の形成がない場合には、肺原発腫瘍と考えます。犬の肺原発の腫瘍は、比較的高
齢の犬に発生します。単発の発生をする場合、右葉の発生が多いとされますが、複数の肺
葉内に多巣性の発生をすることもあります。肺癌は、局所浸潤、およびリンパ行性に肺の
他の部位や支配リンパ節へ転移をします。播種性に胸腔内に浸潤することもあります。肺
原発腫瘍の治療法として、多くは肺葉切除が選択されます。小型で単発の肺腫瘍では、肺
葉切除によって良好な予後が得られる場合があります。
定期的に主治医のもとで胸部エックス線によりフォローアップを行なって頂きます。

