ダクタリ会

症例

犬の特発性乳び胸

5歳の柴犬が最近、呼吸が早いとのことで主治医を受診しました。主治医のもとで胸水の抜去を行なったところ、乳び胸水の貯留が確認されました。精査と外科的な治療目的で紹介受診されました。CT検査および各種検査で乳び胸の原因となる腫瘍性疾患、寄生虫疾患、心臓疾患、外傷などは除外されました。十分な鎮痛処置を行なったのち右側開胸・開腹アプローチにより、結腸リンパ節からインドシアニングリーンにより胸管造影検査を行いました。造影により大動脈の背側に2本の胸管の走行が目視で確認されました。大動脈からこれを慎重に分離、チタンクリップで5箇所の結紮を行いました。さらに、横隔膜にウインドウを形成し、腹腔内から大網を牽引し、胸腔内で固定しました。さらに、慢性の乳び貯留による臓側の胸膜炎に伴い、著しく肥厚した心膜を横隔神経より腹側領域のを超音波メスにより切除を実施しました。この患者さんには胸管結紮、大網置換術、心膜切除術、これらの術式を組み合わせて手術を実施しました。トータルの手術時間はおよそ150分でした。術後5日に乳びの貯留が消失したため退院となりました。柴犬においてこの病気を経験する事が多いため、獣医師の仲間に尋ねると、どうも遺伝的な背景が関与しているようです。今回の手術で完治しなければ、デンバーシャントなどのインプラントの埋入を行う予定です。

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