ダクタリ会

症例

犬の肝葉捻転

8歳のゴールデン・レトリバーがお家で急に元気がなくなり、虚脱状態となったとのことです。救急病院を受診し、血様腹水の貯留と心室性不整脈と循環血液量減少性ショックと診断されました。すぐにショックドーズで輸液が開始され血圧の改善を認めました。翌朝、原因の精査のため当センターに来院しました。患者さんの状態が悪かったので無麻酔CTで腹水の原因を精査しました。血管造影では肝臓の一部に造影されないされない領域が確認されました。確定診断のため開腹すると内側左葉が180°捻転しており、肝臓の辺縁が壊死し出血を伴っていました。捻転の基部をTA30Vで一括止血、肝葉切除術を行いました。幸いにも心室性不整脈は術後48時間かけて消失しました。動物において肝葉捻転に関する情報は不足しており、馬、犬、猫、ウサギに若干の報告があるようです。このワンコはショックの原因が何か分からないにせよ、救急病院での初動が非常によく、またすぐに捻転した肝葉の切除を行うことで危険な不整脈の原因を除去することができ救命することができました。肝葉捻転のように、まだまだ病気の原因や発生機序が分かっていない病気は沢山あります。また、ほとんど例がないので獣医学のテキストにも記載されておらず、そのため大学で学生に教えられるものではありません。現場の臨床医の知恵と工夫と経験を総動員し、一例一例を積み重ねることでようやく治療方法や診断方法が見えて来るのです。病気の解明に近道などはありません。

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