ダクタリ会

症例

猫の慢性腎臓病に対する生体腎移植 Feline Kidney Transplant

8歳の猫ちゃんが慢性腎機能障害を患っており、地元の動物病院で数ヶ月以上、BUNが100mg/dl以上、クレアチニンが8.0mg/dl以上を呈していたようです。これ以上の内科的な治療は限界と判断され、生体腎移植による治療が計画されました。血液型、適合試験、ウイルス検査などの必要な項目をクリアし、ドナーの猫ちゃんより片側の腎臓を提供してもらう事になりました。ドナーの猫ちゃんはシェルターで保護した身寄りのない猫ちゃんです。シェルターのような動物保護施設がなければドナーの猫ちゃんは殺処分の対象になるのが日本の現状です。ドナーの猫ちゃんはレシピエントの家族が里親になることで、その不遇な生涯をシェルター内で過ごすことなく、レシピエントの猫ちゃんと同等の愛情を注いでもらい一緒に生活することが可能となります。(※ドナーに関する問題は議論の尽きないテーマであり、アメリカ、イギリス、ドイツのような殺処分のほとんどない国と未だ猫の殺処分の多い日本の現状を単純に比較することはできません。)腎移植手術はDr.Katayama執刀の元、顕微鏡下で行われました。ドナー腎摘出手術、レシピエントへの動脈吻合、静脈吻合、尿管吻合、腎臓固定など長時間の手術となりましたが米国獣医麻酔科専門医であるDr.Ayako Odaによる血圧管理、術中患者モニターにより無事に移植を終えることができました。術後は24時間体制で集中管理を行いました。術後はシクロスポリンの血中濃度が安定せず拒絶反応が心配されたり、尿管新吻合部位でのトラブルが発生したりと困難な場面に直面しましたが、”猫腎移植プログラムチームK”とオールハートスタッフで乗り越えることができました。幸い移植腎の機能遅延、血栓症、感染症も起こらず、術後すぐにBUNは30mg/dl~50mg/dl台、クレアチニンは0.9~ 1.2mg/dl台と正常範囲に低下し、尿比重は1.033まで回復しました。腎移植を受けた人間も猫も共通して重要なことは”シクロスポリンとプレドニゾロンによる免疫抑制治療”を生涯にわたり服用し続けることになります。※腎移植に関する詳細な情報はHPのリファーラルに記載しています。この腎臓移植は今のところ、国内では岩手大学と当センターのみで行われています。当センター内ではDr.Katayamaをリーダーとした” 移植チーム ”が形成されており、周術期のきめ細かい集中ケアと治療方針はチームで情報共有されています。5週間の入院(平均で3週間から4週間)となりましたが、無事に退院することができました。小さな体で本当によく張ってくれました。あとはドナーの猫ちゃんレシピエントの猫ちゃんご家族が1日も早く仲良しになってもらいたいと願うばかりです。ドナーとレシピエントの猫ちゃんの末長い健康を祈っています。

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