小型犬が突然大きな悲鳴を上げ、起立できなくなったとのことでかかりつけ医を受診しました。診察中に前肢の固有位置感覚が徐々に低下していく様子があり、緊急で検査をしてほしいと主治医から依頼がありました。臨床症状、犬種、年齢、単純エックス線検査等で環軸不安定症が疑われました。全身麻酔下でCTおよびMRI検査を行うと、環軸関節の亜脱臼に続発した頸髄の圧迫病変が確認されました。脊髄損傷から呼吸不全に陥り、死亡する危険性があります。手術までの待機期間は安静に過ごしていただくのと同時に損傷を受けた脊髄神経を回復させるためにプレドニゾロン、疼痛管理としてプレガバリンの投与を行いました。また手術に先立ちCTから得られた患者さんのDICOMデータを抽出し、3DプリンターでAAI造形モデルを作成し、シミュレーション手術を行いました。今回はセメントレス方式で強固に固定できるTitanium Locking PlateによるAAI固定術・海綿骨移植を選択しました。この一連の作業によりインプラント装着時には手術時間と麻酔時間を大幅に短縮できるというメリットがあります。AAI固定術は非常に繊細な技術が要求される手術であるため、術中に迷いが生じないようしっかりとした準備をすることが重要です。小さくて華奢な骨格の子でしたが、術後の回復も順調でなによりです。本当によく頑張ってくれました。