ダクタリ会

症例

粘液嚢腫→壊死性胆嚢炎→胆嚢破裂による胆汁性腹膜炎

胆嚢の病気を2年間近く内科的に管理していたが、ここ数週間で急激に悪化し、胆嚢破裂に進行したワンちゃんがいるので、外科的に対応して欲しいと主治医の先生から連絡がありました。ビリルビン値が上昇し、腹水が溜まっている状態でした。開腹し、破裂した胆嚢を切除し、総胆管の疎通は外科用イメージ下で造影し、確認しました。幸い、腹膜炎から徐々に改善し、術後5日で退院となりました。壊死性胆嚢炎は中年から高齢の犬により多く見られ、血栓栓塞症、腹部外傷、細菌感染、肝外胆管閉塞や胆嚢粘液嚢腫によって引き起こされることがあります。壊死性胆嚢炎は胆嚢破裂や周囲組織への癒着を伴うことがあります。壊死性胆嚢炎の治療にはほとんどの患者さんで胆嚢摘出が必要であり、臨床徴候として腹痛、発熱、肝臓酵素の上昇など通常、急性に認められますが、臨床徴候は全ての患者さんで必ずしも明らかであったり持続性であったりはしません。胆嚢破裂の前に胆嚢摘出がなされた症例の予後は比較的良好と考えられます。しかし、胆嚢破裂よる胆汁性腹膜炎を伴う場合の術後の死亡率は20~50%であり、胆嚢破裂がなかった場合と比べて2.7倍の死亡率が報告されています。このようなことから、肝臓や胆嚢は沈黙の臓器と言われています。中年齢になったワンちゃんは健康診断の一貫として腹部エコー検査をかかりつけ医の先生にご相談ください。沈黙の臓器である胆嚢に病変が認められるかもしれません。

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