ダクタリ会

症例

沈黙の胆嚢粘液嚢腫

14歳の高齢犬が胆嚢の病気を患っており、徐々に黄疸が酷くなり内科治療を継続しているが、改善しないのでなんとかして欲しいと主治医より相談がありました。超音波で確認すると胆嚢粘液嚢腫による総胆管閉塞です。残念ながらこのままだと死亡する可能性は高くなります。慢性の心臓弁膜症も抱えていますが、飼い主さんの期待に答えるために外科手術に望みをかけました。開腹すると胆嚢は一部横隔膜と癒着し、過去に胆嚢破裂や局所での腹膜炎が生じていたことが予想されました。十二指腸切開を行いカテーテルを逆行性に挿入し、総胆管に詰まった胆汁や一部ゼリー状のデブリを少しつづ除去しました。総胆管の開通が確認できたところで、肝臓より胆嚢を剥離し、胆嚢頸部で切除しました。また術後の栄養管理のための空腸栄養カテーテルを設置しました。術後は敗血症、血栓症などに留意しながら鎮痛管理を行いました。胆嚢粘液嚢腫は一般的に周術期死亡率の高い疾患として知られており、術後の突然死も時折経験します。幸い術後すぐに黄疸の数値が低下し、5日目より自発的な食欲が戻り、術後7日後に無事退院しました。病理組織検査では胆嚢壊死が起こっていました。胆嚢壊死が生じている患者ほど予後は悪いと言われており、早い段階でこの病気を見つけることが治療成績の向上につながると思われます。嚢・臓・臓は沈黙の臓器と言われており、定期的に画像診断を含めた健康診断が必須です。

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