ダクタリ会

症例

胆嚢粘液嚢腫という病気

7歳のチワワが胆嚢粘液嚢腫により、黄疸が出て激しく嘔吐している。外科的に対応して欲しいと主治医から連絡がありました。エコーではキュウイフルーツ様の典型的な胆嚢を呈していました。胆汁性腹膜炎はなし。来院から12時間、積極的な静脈内輸液、抗生剤、ブレンダZ、制吐剤などの投与を行いました。その後、全身麻酔下で十二指腸を切開し、乳頭から総胆管にアプローチ、閉塞の原因となっているムチン様の粘液物質をフラッシュし、大量に除去、カテーテルで疎通を確認。胆嚢頸部からチタンクリップにより胆嚢を切除、肝生検、小腸生検を実施。術後は空腸カテーテルを設置し、十分な腹腔洗浄を行ったのち閉腹。血液検査、肉眼的にも膵炎の併発はなさそう。術後の覚醒はスムーズに行われた。手術時間は70分ほど、周術期の低血糖、低血圧などは確認されない。術後2時間でICU内で家族の面会時にも起立し、腹部に軽度の痛みはあるものの良好に推移。このまま良好に経過するものと期待されていたが、約6時間後に突然意識レベルの低下から心肺停止。心肺蘇生を行うも。甲斐なくお亡くなりになった。胆嚢粘液嚢腫により、胆嚢破裂に移行していたとしても、決して予後不良ではないことは知られているが、この胆嚢粘液嚢腫という疾患はやはり、死亡リスクの高い疾患であると再認識。特に病理検査において、胆嚢に壊死が認められる患者さんでは予後が悪いことが知られています。友人の獣医師に聞くと、この病気のバリエーションは120通りあるのではないか?と教えられました。つまり、同じ病名でも、患者さんごとに病態は異なるのだと思います。この疾患の救命率を上げるために日々、研鑽しなければなりません。

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