ダクタリ会

症例

膝蓋骨内方脱臼と前十字靭帯断裂に対するTTTとCBLO#145

蓋骨内方脱臼を持っているけど症状なく元気に過ごしている。というワンちゃんは少なく無い。しかし!前十字靭帯断裂を併発してしまうと顕著な臨床症状を示すようになる。かかりつけの先生より、なんとか歩けるようにして欲しいと連絡があった。小型犬の前十字靭帯に対してCBLO、膝蓋骨内方脱臼グレード3に対してBRT,TTTで対応可能か?術前にシミュレーションを行った。まず、膝関節に外側アプローチ。大腿骨滑車がほとんど形成されていなかったことから、BRTを行い大腿骨滑車の深化術。完全に断裂した前十字のデブライドを行い、内側半月板尾部の部分摘出、その後、余剰関節包の切除を行ったところで膝関節を閉鎖。次にCBLOにより膝関節の機能的安定化のために脛骨内側にR12のドーム状骨切りを行い、脛骨近位フラグメントを4.2mm前方へ回転矯正、コンプレッションテストが陰性になっていることを確認後インプラントで本固定。続いて大腿四頭筋、膝蓋骨、膝靭帯、脛骨粗面、足根関節のアライメント調整。ここで重要な追加手技、脛骨粗面外側移行術:TTTを行う。 シミュレーション通りに脛骨粗面を完全に骨切りし、数本のチタン合金ワイアーとTBWにより膝靭帯の牽引に抵抗できるように強固に固定。BRTの際に得られた海綿骨をTTT部位に治癒促進目的で自家移植。小型犬にはこのパテラと前十字、似ているようで、似ていない2つの病態に対して同時に対応しなくてはならず、治療に苦慮する場面は少なく無い。一般的にパテラがあっても前十字靭帯断裂を起こすリスクとの関連性はないと言われているが、ひとつ言えることは症状のないうちにTTTを含むパテラの脱臼の治療をしておけば、前十字靭帯を断裂してしまった場合でもアライメント矯正のためのTTT(ダブルカット)をしなくても済む。症状やグレードによってパテラに対する考え方、アプローチ法、術式の好みなど様々であるが、治療できるものなら早めに治療しておきたい。Treat for the Treatable…治療できるものから治療せよ。アンクルマイキーの金言より。

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