ダクタリ会

症例

若齢期股関節形成不全に対する予防的骨切り矯正術

ールデン・レトリバーの生後10ヶ月齢のパピーです。散歩中にわずかに右後肢の”違和感”が気になったそうです。X線検査と触診でシャープなオルトラニが確認されました。初期の股関節形成不全による骨関節症(Osteoarthritis以下、OA)ステージ1と診断しました。この時期のOAは通常、一時的な筋肉痛じゃないの?成長痛かもよ?といった具合で、見過ごされる事がほとんどです。そのため、跛行があったことや”違和感”を一過性の事と認識し、”子犬=いつも健康である”といった先入観から、ついつい”違和感”や病気の事を忘れがちになります。早期に正しい診断と適切な処置(体重管理、NSAIDsの投与、運動管理など)ができなければ、通常はOAステージ2にまで進行します。※成長期には体重管理が非常に重要です。できれば、人の赤ちゃんが検診を受けるように肘関節であれば生後4ヵ月の時点で整形外科的な診察が望ましいとされています。(※股関節形成不全という病気があるという認識は一般的ですが、実は肘関節形成不全も同じくらいの罹患率があると報告があります。)
今回は、OAステージ2への進行を遅らせる目的で三点骨盤骨切り術(Triple Pelvic Osteotomy,TPO)で対応することになりました。この手術の良いところは人工物で関節を置換するのではなく、患者さんの自骨が温存できることです。恥骨、坐骨、腸骨の骨切り術により寛骨臼を腹捻させ、専用のオブリーク・ヒップ・プレートとロッキングスクリューにより骨切り矯正を行っています。1ヶ月ほど安静が必要ですが、徐々に股関節の噛み合わせが良くなります。TPOが適応されるのは、遅くとも1歳齢以下の患者さんで亜脱臼が軽度、X線でのOAの出現が最小限など、いくつかの条件をクリアする必要があります。

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