ダクタリ会

症例

陰圧閉鎖療法

犬の咬傷に対して、陰圧閉鎖療法(Negative Pressure Wound Therapy 以下NPWT)を適応した。このNPWTは創傷に対して被覆材を使用した閉鎖環境に、持続的にまたは間欠的に吸引ポンプで陰圧を生じさせることにより創傷治癒を促進させる方法である。
 NPWTの臨床応用に関しては、1993年にFleischmanらが開放骨折に対して創傷を陰圧環境で管理することで治癒が促進されたという報告が初めてのものである。我が国において人医療域では2010年から保険適応となっているが、獣医療領域においては比較的新しい分野と言えよう。我々の施設では数年前より取り入れ、一定の効果を示している。したがって、今では犬猫の創傷の治癒促進のために積極的に採用している方法である。NPWTを採用する理由として以下のようなメリットがある。

1) 過剰な滲出液の排除と浮腫の軽減:創を適度な湿潤環境にする。
2) 肉芽形成の促進:陰圧による外力が細胞機能に物理的な刺激を与える。
3) 創収縮の促進:陰圧にすることでポケットに対し癒着効果により収縮を助ける。
4) 創の血流の増加:陰圧環境では血流が増加し、治癒に好影響を与える。
5) 感染の抑制:陰圧効果による直接的細菌除去や細菌量の軽減。

ではどのような適応があるのか?
獣医療領域では難治性創傷(猫に多い)、滲出液の多い創傷、ポケット形成、浮腫、外科手術後の離開、褥瘡などである。※人医療では糖尿病による足壊死など。

このワンコに対してまずは、大量のリンゲル液でイリゲーションパルス洗浄機を用いて、異物や細菌、壊死組織を排除する目的で徹底的にデブリードマンを行った。(※この時、決して傷は消毒はしてはならない。アルコール、イソジン、ヒビテンなど細胞障害性のある成分は一切使用しない。とにかく物理的に洗うことが優先される。)今回はスミスのPICO7を採用(小型で軽量65gであり、入院せずとも自宅で持続的に80mmHgの陰圧管理できるバッテリー式であるため。)ワンコにTシャツを着てもらい、一時的に装着しておくことで自宅でも管理できる優れた製品である。

傷の痛みから解放されて、早く良くなりますように! ~time heals ALL wound~

 

 

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