ダクタリ会

症例

骨盤腔内の平滑筋腫

スムーズに便が出ない、時折排便困難とのことで主治医を受診されました。直腸検査により
骨盤腔内に腫瘤が確認されました。CTによる精査と外科的な摘出を目的に来院されました。

CTでは骨盤腔内を占拠する病変が結腸より派生していることが示唆されました。
術前には腫瘤をどの程度展開できるか?わかりませんでしたので、骨盤を一時的に開放して切除
する準備をして手術に臨みました。幸い用手により腫瘤を腹腔内に牽引し、大腸壁と剥離することが可能でした。

所見
結腸漿膜面に固着していた腫瘤は4×3.5×2.5cmであり、全体を十字方向に切り出して鏡検しました。

これは比較的境界明瞭な腫瘍性病変であり、紡錘形細胞の不規則に錯綜する束状の増殖巣
で構成されています。個々の腫瘍細胞は、境界不明瞭な中等量の好酸性細胞質と楕円形~
細長い核、1-2個の小型核小体を有しています。細胞異型、核異型は軽度で、核分裂像
は高倍率10視野あたり0-1個です。腫瘍巣内に壊死巣は観察されません。

病理組織学的評価
平滑筋腫 Leiomyoma

コメント
腫瘤は平滑筋腫と評価します。今回の標本には腸管粘膜等の組織構造は確認されず、標本
のみで由来組織を特定することは困難ですが、提供された情報からは結腸壁由来の可能性
が高いように思われます。
腸管で発生する平滑筋腫瘍は、空腸、盲腸、直腸が多いと報告されています。一般的に単
発性で、大きさは1cmから17cmまで報告されています。腫瘤の発生場所や大きさに
もよるようですが(切除が可能であるか)、良性腫瘍の場合はその多くで切除後に良好な
経過を示しています。今回の病変は標本上で比較的境界明瞭であり切除されているように
みえますが、手術時の肉眼所見とも併せてご検討ください。

良性腫瘍とはいえ、著しく生活の質を低下させる病気でした。しかし、物理的な圧迫が解除されたため
予後は良好と考えられます。    

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