ダクタリ会

症例

Mott細胞分化を伴う腸管リンパ腫 Intestinal lymphoma with Mott cell differentiation

2歳のミニチュア・ダックスさんが嘔吐を主訴に動物病院を受診しました。かかりつけの先生が超音波で腹腔内腫瘤を指摘しました。そこで、CTによる腹部の精査のため紹介受診となりました。CTでは腹腔内(消化管)のMASSが確認され、FNAによりMott細胞分化を伴うリンパ腫が疑われました。このMott細胞分化を伴うB細胞性腸管リンパ腫は稀なリンパ腫は文献で確認できた4症例のうち3症例が2歳以下で、2症例はミニチュアダックス(2歳 Vet ClinPathol 2009;38:113-120、1歳 Vet Clin Pathol 2008;37:409-15)です。症例が少ないためMott細胞分化を伴うB細胞型の腸管リンパ腫に特定した予後情報は文献上確認できませんが、消化管のリンパ腫に治療を試みる場合、切除可能な孤立性のリンパ腫を除き、化学療法と対症療法が治療の中心となります。約半数のイヌの消化管リンパ腫が多剤併用化学療法に反応すると報告されていますが、化学療法に反応した患者さんでも最初の寛解期間は86日、中央生存期間は117日と報告されています。今回は外科的に腫瘤病変を取り除き、腸閉塞を免れたと思われますが、画像診断により定期的なフォローアップが必要と考えられます。ミニチュア・ダックスは若齢の腸管型リンパ腫が見られることがあるので、”単純な嘔吐”と考えないで、詳しい超音波検査を実施したかかりつけの先生によりこのリンパ腫の早期発見に繋がったと思われます。

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