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猫の生体腎移植〜移植で救われるふたつの命〜

体腎移植によって救われる”ふたつの命”があります。ひとつは”猫の慢性腎不全”から救われる命、もうひとつは人間の勝手な都合で行われる”殺処分”から救われる命です。慢性腎機能障害の猫ちゃんが当センターで生体腎移植を受け1年が経過しました。当時はかかりつけの病院で皮下点滴や貧血に対するホルモン治療などを受けられてきましたが、食欲も安定せず徐々に痩せ細ってきていたようです。病気がこのような状況に進行すると人医領域では透析か腎移植による治療が適応となります。岩手大学の片山教授との腎移植プログラムにより当院で人医と同様に慢性腎機能障害に対する根治的腎移植を実施しました。アメリカで腎移植が最も盛んに行われている施設であるペンシルバニア大学のLillian R. Aronson等の報告によると年間約16頭ほどの移植手術が行われているようです。ドナーの猫ちゃんはシェルターなどの動物保護施設にいる不遇な子であり、アダプト後は家族の一員として生涯にわたって可愛がっていただきます。(日本はまだまだ猫の殺処分の多い国です。)動物保護施設がなければドナーの猫ちゃんは確実に殺処分されていました。


腎移植を受けた患者さんの1年後の様子。

ご家族から元気な様子の写真をいただきました。著しくQOLは向上し、ガツガツ食べるほど食欲は旺盛で、体重も増え、排便排尿も問題なく過ごしているとのことです。血液検査において腎機能はほぼ正常に改善し、BUN34mg/dl、クレアチニン1.5mg/dlほどで安定しているようです。


腎臓を提供したドナーの猫ちゃんと同居のワンちゃん。

さらに嬉しいことは片側の腎臓を提供したドナーの猫ちゃんが同居のわんちゃんとも仲良くされていることです。動物保護施設で社会化ができなかった猫ちゃんも優しいご家族に巡り合い殺処分から命を救われ、フレンドリーな猫ちゃんに変わってくれました。愛情たっぷりに可愛がって頂けるご家族に巡り合え本当に良かったと思います。人と動物との生活から生まれるものを”人と動物との絆 ヒューマン・アニマル・ボンド”と呼んでいます。常にこの”絆”を中心に置いた獣医療が望まれます。

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