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米空軍横田基地の動物診療所視察

医師の雲野です。先日、町田市獣医師会有志で、米空軍横田基地の動物診療所を訪問しました。獣医師10名、看護師5名のバスツアーで和気藹々と町田市を出発し、約1時間半程で横田基地に到着しました。診療所には獣医師2名が在勤し、うち1人が日本の方でした。動物を扱える軍人さんは多数いるのですが、米国の動物看護師(veterinary technician)の資格を持っている方はJさん1人でした。動物看護師のJさん、日本人獣医師のI先生から以下の貴重なお話を伺うことができました。初めに、一般の動物診療ではまず出会うことのない軍用犬についてお話しします。横田基地での診療動物は主に軍用犬、その次に横田基地在住者や政府関係者のペットです。軍用犬として横田基地で働く犬は、主にアメリカで訓練を終えた後、2−3歳齢から7歳齢ぐらいまで任務につきます。引退した後は、軍用犬のハンドラーに引き取られるか、もしくは軍用犬専用施設(軍用犬育成所)で暮らします。何らかの怪我・病気のため止むを得ず引退する犬がほとんどだそうですが、戦う(人を攻撃する)訓練を受けていることから、通常、一般家庭へ譲渡することは難しく、約400頭がハンドラーに引き取られるのを待っているのが現状です。軍用犬は、ヒトの軍人さんと同じように兵士として扱われます。一人前の軍用犬を育て上げるためには1頭当たり約400~700万円かかり、病気や怪我の際に動物病院の受け入れ先が無い場合には、ヒトの病院を受診することもあるそうです。ちなみに、一人の軍人さんを育て上げるには約100~300万円かかるそうです。これには大変驚きました。軍用犬は、つまり軍人さんよりも育成に費用をかけるに値する、軍にとって非常に貴重な戦力であることがわかりますね。

次に、アメリカの動物看護師についてお話しします。アメリカで動物看護師として働くには、日本と同様に必ずしも免許が必要なわけではありません。勤務する州によって免許が必要か否かは異なり、何も必要としない州もあれば、州の免許と国家試験に合格して取得する国家資格のどちらか、または、両方を必要とする州があります。国家資格の取得には、AVMA公認の2年もしくは4年コースのVT育成プログラム(動物看護師育成プログラム)を修了し、動物看護師国家試験(VTNE)に合格する必要があります。また、VT育成プログラムを受講するには、数理系の一般教養が必要で、大学もしくは短期大学(コミュニティ・カレッジ)で単位を取得する必要があります。試験の合格率は70%と日本の獣医師国家試験や動物看護師統一認定試験に比べてやや難しく、資格を維持するのにも、数年ごとに定められた時間数の研修講座を受講する必要があります。Jさんは元々資格を持たずに一般の動物病院に勤務し始め、それから任せてもらえる仕事を増やすために在住していたフロリダ州の動物看護師の資格を取得したそうです。資格を持つ前と持った後での違いは、顕微鏡検査、注射、採血、膀胱穿刺などさまざまな検査や手技を獣医師から任され、給料も増えたという点です。今後、日本でも獣医師が担っている役割の一部を、動物看護師にしっかりと教育し、任せられるようになれば、お互いの仕事の幅が広がるのではないかと考えさせられました。

最後になりますが、お忙しい中このような大変貴重な機会を設けてくださったI先生、Jさん、横田基地スタッフの皆様方に厚く御礼を申し上げます。
p.s.
お昼には皆さんと横田基地内のレストランでメキシカンバッフェ(日本のいわゆるビュッフェ)を美味しくいただきました!

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