ダクタリ会

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CSU研修レポート3/18-26 in Critical Care Service, CSU SPUR, Dumb Friends League

CSU(コロラド州立大学)は現在人員不足により夜間緊急外来の受け入れを停止していたが、それでも重症疾患の患者は多く入院していた。救急・集中治療科は二つの部門に部屋が分かれており、Emergency & Urgent Careは救急患者の受け入れ、診断と初期治療、必要であれば外科などの各科にコンサルテーションを行い、Critical Careは継続的なモニタリングが必要な重症患者の入院管理をしており、人工呼吸が必要な呼吸不全患者、心不全患者、腫瘍科の重症症例(周術期)などが主だった。ちなみに一般的な外科手術・麻酔覚醒後の患者はどこへ行くのかというとIntermediate Care Unit(中等症ケア)へ送られる。

Critical CareではDACVECCで外傷が専門のDr. HallとレジデントのDr. Talbotが中心となって治療にあたり、モニタリングや投薬はすべて看護師が行っていた。獣医学専攻の4年次(最終学年)が二名ローテーションで在籍しており、各々患者を担当してプロブレムリスト作成、鑑別診断、治療、モニタリングなどを朝のミーティングで専門医とディスカッションを行っていた。週一回学生が疑問に思ったテーマでレジデントが1時間程度のセミナーを開き(今回はDKAについて)、いつでも質問できる雰囲気があり、充実した教育環境が整っていた。

今回の研修の第一の目的としていたのは人工呼吸、High Flow Nasal Oxygen Therapyなどの適用~離脱までの管理であり、運よく見学することができた。CSUでも人工呼吸管理を必要とする患者は多いわけではなく、Facultyの先生も人工呼吸管理に詳しいレジデントに人工呼吸器の操作を教わっていた。その患者はBCS9/9の5歳のオーストラリアンシェパードで、散歩中の首輪の刺激により頸部浮腫、上部気道閉塞による呼吸困難、続発性の非心原性肺水腫、高体温となっていた。一日目は挿管(自発呼吸、100% O2)のみ、二日目はそれで維持できなくなり人工呼吸管理(30% O2, SIMV)に切り替えた。その翌日のroom air下での血液ガスが改善していたため抜管したのだが、pH 7.42, PAO2 72.3 mmHgであり、PAO2がこんなに低くて問題ないのかと疑問だったが、CSUがあるコロラド州フォートコリンズは標高1,500mに位置しておりPAO2はこれが普通なのだそうだ(なるほど!)。抜管後は2-3時間酸素ケージで呼吸に問題がないことを確認した後、歩いて家に帰っていった。CSUは獣医療的に充実していることはもちろんだが、学生や研修医への教育方法や看護師のチームワークが良いことが特に印象的で、今後のチーム作りに生かしていきたいと感じた。

教育病院の研修の後は、CSU SPURとDumb Friends League(動物保護施設)を見学した。CSU SPURは一般人向けの教育施設であり、獣医療・環境・食糧問題などに子供のうちから触れられ、楽しみながら学習できるようになっている。保護動物の手術を実際にガラス越しに見られることには驚いた。アメリカは次の世代への教育的な投資に力を入れていることに衝撃を受けるとともに、日本の未来への不安も感じた。動物の飼育頭数は減少し続け、子供への教育レベルも30年間進歩をしていない日本は大丈夫なのだろうか?Dumb Friends Leagueのような寄付で成り立つ動物保護施設ができるのは何十年先になるのか?

日本の動物看護師もアメリカのように国家資格化したわけであり、これまでよりもはるかに多くの医学的知識・スキルが必要となってくる。人間と動物が共生する社会の実現のためにも獣医師と看護師が一層努力しなければならないと感じた研修だった。

鈴木

 

CSU VTH

 

CSU SPUR

Dumb Friends League

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